「俺、ハルのこと好きだよ」
野球バカがいきなり、そんなことを言い出しやがって、それに何と答えたかって、アホ女が。
「ハルも山本さん、好きですよー。でもツナさんにフォーリンラブなんです！」
と両手を顔の横で重ねて、頬をピンク色に染めて、うっとりとした顔でそう言うから、野球馬鹿はちょっと、ポカンとして、
「そうなのなー！でも俺も負けないぜ」なんて「ははは」と笑うから、「はひ。山本さん、もぅ、そんな冗談ばっかり」って、
アホ女の奴、ちょっと赤くなりやがって・・・・・・
あー！うっとうしー！なんっか、ムカツク！！！
「だー！うるせー！野球馬鹿にアホ女！くっだらねぇことベラベラしゃべってんじゃねぇ！」
「いきなり何ですか！獄寺さん！」
「うるせー、うるせー、うるせー、アホ女！」
「アホとは何ですか！このアウトロー！」
「まぁまぁ、二人とも」
俺とハルはいつものように睨み合って、対峙していたのだが
「あ・・・ヒバリさん」
ふとハルが視線をはずして、そんなこと言い出した。
「は？」
「え？どこに」
「ほら、あそこ・・・」
ハルが指差すヒバリは、なんと２階校舎の中だぜ。
「お前・・・よく分かるな」
「え？だってヒバリさん、特徴あるから」
「特徴あるって・・・」
普通、気付くか。いがみあって、俺と睨み合っている最中に。
ハルは、疑わしそうな俺たちを見て、
「・・・だって、大体、この時間帯がヒバリさんの見回りの時間ですから、見間違ってはないと思うのです。なんなら・・・」
ハルは大きく息を吸って
「ヒバリさーんっ！！！」
「なっ！」
「ハル！」
このアホ！呼びやがった。
ヒバリは立ち止まって、こちらを向く。
おい、こっち来んなよ、と思っていた俺の心のなか空しく、奴は２階から飛び下りて、こちらに向かって来やがった。
ハルの前に立つ。
「・・・やぁ、三浦。なんだい」
「こんにちは、ヒバリさん」
この野郎・・・俺たちの方をピクリとも見やしねぇ。
「ほらね、ヒバリさんだったでしょ」
ハルは誇らしげにニッコリほほ笑む。
「ハル、すげぇな！」
山本は笑いながら言ってるが、あいつの心の中、おだやかじゃないことは、すぐにわかった。
だって、俺、だって・・・。
俺たちの方に向けているハルの頭をヒバリは掴むと、ぐいっと方向を自分の方へ変えさせる。
「三浦ハル、用がないのなら僕を呼ぶな、とあれだけ言ったのに、わからない子だね」
「だってヒバリさんって、すぐに目に入っちゃうから、そうしたら、なんだかお話したくなっちゃうんです！」
「僕はそんな君の気紛れに付き合うほど暇じゃないんだけどな・・・」
ふうっと息を吐くヒバリ。顔はしかめ面だ。
だが、なんだ、これ。
なんだ、この雰囲気。
二人の間にあるこの空気。
なんだ、奴のハルを見るあの瞳は。
・・・気に食わねぇ！
「・・・三浦ハル、君そんなに暇なら、草壁が君に新作ケーキがあるって言ってたってこと、教えてあげるよ」
「はひ！草壁さんが！行きます！今から応接室にゴーです！」
歓喜のハルの声が空中に響いたとき、俺の頭のなかで、何かがパチンとはじけた。
「ダメだな」
「はひ！ちょっと、引っ張らないで下さい、獄寺さん！」
俺はハルのポニーテールをグイッと引っ張るとハルを俺の体の後ろに追いやる。そうして体を正面に直して、ヒバリと対峙する形をとる。ヒバリの漆黒の目をギンッと睨み付ける。
「こいつは、ダメだ」
「・・・・・・」
ヒバリの冷ややかな瞳が一瞬ゆらいだのを俺は見逃さない。
「獄寺さん！何がダメなんですか！勝手なこと言わないで下さいっ！」
このアホ女！大人しくしとけっての！
ハルが俺の後ろから、前へ出ようとする。それを俺は手と腕で押さえこむ。
俺とヒバリの視線と視線が空中でぶつかり合う。
ひかない。
譲らない。
渡さない。
今、俺の目の前で、ハルを連れていくなんて。
絶対、許さない。
認めない。
俺はハルの手をにぎる。
「はひ？」
そのまま、引っ張ろうとしたら、俺の腕をヒバリが掴んだ。
「なんだよ！」
「君、どういうつもり・・・」
ギンッと再び空中でにらみ合い、俺はハルの手を放して、代わりにダイナマイトを指に装着する。
やつはトンファーで戦闘態勢だ。
「おいおい、獄寺。ヒバリも」
「はひ？」
山本の制止の声とハルのとまどい声が聞こえたが、こいつは前から気に入らなかったんだ。
じりじりと間合いをつめ、もう少しでヒバリのテリトリーに入ろうとしたとき、
「おーい！獄寺くん、山本！」
ふと前方から声をかけられて、俺は反射的に視線を雲雀から遠くへ見やった。
「１０代目？」
「はひー！ツナさーん！」
「・・・とハル・・・と、え？ヒバリさん？」
１０代目の足が止まったようだったが、俺はすぐさま１０代目のお隣に(それも右側)に行きたくて、目の前の雲雀なんて
目に入らなくなって、ヤツの隣りをさっと横切ろうとして・・・・・・すっころんだ。
「て、てっっめー！何しやがる！」
「まだ、勝負はついていないよ」
「もはや、お前なんかに構っている暇はねーんだよ！」
「ツナさーん」
そんなやり取りをしている俺とヒバリの横を、ハルがぱたぱたと１０代目のところへ走りよる。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
無言の俺たちの背後で、ハルのキャッキャッ言う声が聞こえてくる。
ヒバリはクルッと向きを変えると、さっさと校舎のほうへ歩き出した。
そうだよな・・・俺もなんだか馬鹿馬鹿しくなってきたところだ。
結局のところ、まだまだ１０代目には敵わない。
だけど。
だけど・・・？
・・・それで、おしまい？
数日後。
俺はある部屋の前にいた。ふだんなら絶対に近寄らない場所だ。そのドアを俺は睨み続ける。
数分後。
ポケットに入れていた手を伸ばし、取っ手をつかむ。ぐいっと引っ張り、バンっと勢いよく開けるとドアが壁にぶつかって
跳ねた。そのまま真っ直ぐに進む。
ヒバリと話をしていた背の高いリーゼントの男が驚いた顔で立ちふさがろうとしたが、ヒバリが片手をあげたから、俺は奴の正面に立つことができた。
そのまま真っ直ぐヒバリの黒炭色の目を見据える。
無言。一瞬の合間の攻防。俺も奴もひかない。
バンっと両手を机につく。
ヒバリは顔の前に重ねた手を動かさない。
俺は口をひらく。
「絶対に・・・渡さないからな！」
俺はそれだけを言うと、くるっと方向を変える。
・・・主語はなかったが、伝わったはず。
本来なら、こういうことを宣言するのは、うっとうしく、面倒くさく、恥ずかしくもある。
この俺が？って感じだ。頭が馬鹿になったかな、とも思う。
だが、逃げたくない。
ハルに関わるすべてのことから。
なんだってやってやる。
こういうことは、越えなければいけない試練なんだ！(きっと)
分かったことがある。
いつも一緒にいるだけで、安心していた俺は甘いってこと。
守っているつもりでは駄目だってこと。
彼女は、プリズムガール。
きらきらと輝いて、さまざまな男を知らず知らずのうちに魅了させる。
その光に引き寄せられて、捉えられて、離れられない。
好きなら態度でしめせ。
まどろっこしいことは嫌いだ。
いや、まどろっこしい性格ではあるけれど・・・。
それでも。
今は片思い、上等。
戦闘態勢！迎撃用意！受けてたつぜ！
いつも側にいる分、俺の方が有利だ。
本気になった俺の熱情、見さらせ。
俺は歩き出す。
次に行く場所は、ボンゴレ雨の守護者のもとだ。
俺は、俺が去ったあと、風紀委員の名が入ったヒバリ愛用の鉛筆が折れたことを知らない。
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1万ヒット御礼リクエスト「獄→ハル←山 で、ハル(無自覚)→←ヒバなお話」でした。
うーん、どっちかといえば、獄山雲→ハル→ツナって感じになってしまったのですが・・・。ちょっとは、無自覚なハル→←ヒバリはだせたでしょうか？獄寺くん中心で山本くんが目立たなくなってしまって、ごめんなさい。
リクエスト、ありがとうございましたｖ
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