１１月に入れば、オレンジ色と黒色をチャームポイントとして、カボチャが主役の可愛らしかったり、ユニークだったり、
お洒落だったり、微笑ましかったり・・・見ているだけでウキウキしていたグッズたちは途端に影をひそめていって、まだ
１ヶ月以上もあるのに、街はその姿を変えていく。
少し風が冷たくなった街を彩るのは、キラキラと輝く光の粒たち。
赤色や青色や緑色や黄色や白色の、いろいろな美しい色の光がカタチを作って、見ているひとを楽しませようと、頑張っている。
並盛町も例外になく、何かをテーマとしているのだろうか、青色を中心としたクリスマスイルミネーションが、ハルの頭の上にも、隣りでもキラキラキラと輝いて、いつも以上ににぎやかな並盛町の商店街をマフラーをグルグル巻きにして、上を見たり、横を見たりしながら、にっこりして歩いているハルの足は思わずスキップしたくなるほど、去年以上に軽やかだ。
クリスマスは毎年、好きでしたけど・・・今年は特別なんです。
今年は・・・だって、ヒバリさんと過ごす、初めてのクリスマスですから。
12月に入ってからも指折り数えて、クリスマスプレゼントは何にしましょうか、そうです、クリスマスケーキを予約しておかなくっちゃ、もちろん、ラ・ナミモリーヌのケーキですよね、確か、お店の中でもケーキを食べれたハズです、早速、予約しなくっちゃ！
夕方から、並盛商店街で、並盛クリスマス祭りが行われるハズです。中心の並盛町最大のクリスマスツリーの点灯式とハンドベルの演奏があるのでした。それも、見なくっちゃ！ですね。
服はどれにしましょうか、髪型はどんな風に結いましょうか、髪飾りはどれにしましょうか、靴は、バッグは・・・とか、考えることもとっても楽しくて。
クリスマス当日は、ヒバリさんに手をつないでいただいて、一緒にケーキを食べて、クリスマスプレゼントを交換して、点灯式を見て、色とりどりのクリスマスイルミネーションを見ながら「キレイですね」と言って、ふと目があった瞬間、キ、キスなんかしちゃったりして・・・・・・。
「はひー！いやです〜ヒバリさんったら〜！」
「・・・・・・なにが・・・・・・？」
右手を頬に当てて、左手をブンブン上下に振り回しているハルを、書類を持つ手を止めて(どちらかといえばフリーズさせられて)雲雀と草壁(呆然)は見つめている。
「いえー！こちらの話です！」
ハルは真っ赤になりながら、スーハースーハーと呼吸を整える。
「・・・ところでヒバリさん、何時に待ち合わせにしますか？」
「・・・・・・・・・何の話？」
「なにって、クリスマスですよ。クリスマス。一緒に・・・」
「今、草壁と何の話をしていたか、聞いてなかったの？」
「？・・・すみません。なんの話だったのですか？」
「並盛クリスマス祭りの風紀活動について」
「はひ？」
「クリスマスは風紀を乱す輩の見回りだよ」
「はひー！！！」
つんざくようなハルの悲鳴に雲雀は、眉間にしわを寄せて、草壁はのけぞった。
「うるさいよ、君」
「はひ、だって、風紀の見回りって・・・・・・」
「そうだよ」
「だって、クリスマスですよ！！」
「そうだね」
「だって・・・ヒバリさんとハルがお付き合いを始めてから、初めてのクリスマスですよ！！カップル最大の冬のイベントですよ！！」
「それが、なに？」
「なにって・・・・・・。・・・・・・だって、ハル、クリスマスケーキ、予約しましたし・・・・・・」
・・・・・・クリスマスプレゼントだって、ばっちり購入済みなのです・・・・・・
あとに続く言葉は心の中でそっとつぶやく。
「・・・・・・僕は、見回りだ。君には付き合えない」
「でも、ヒバリさん！でもハルは一緒に行きたいです・・・・・・」
ハルの声はだんだん、か細くなっていく。
「ダメなものはダメだ。そんなにクリスマスとやらをやりたいなら、草食動物たちとすれば良い」
「恭さん、それは・・・」
さきほどから草壁がハラハラしながら二人のやり取りを見ていたが、更なるヒバリの発言に思わず口をはさむ。
横目でハルを見ると案の定、ハルは俯いている。肩がふるえている。
「あの恭さん、見回りは我らに任せていただいても・・・」
「草壁」
「はいぃぃぃぃぃ！」
氷の鉄槌で心臓を突き刺されるような鋭い声で名前を呼ばれて、草壁は反射的に「気をつけ」の形をとる。
沈黙が辺りを支配して、草壁が胃の痛みをチクチクと感じはじめた時、
「だったら」
「・・・なに？」
「だったら獄寺さんと一緒にクリスマスを過ごしますよっ！良いんですかっ！！」
「・・・・・・好きにすれば」
「じゃあ、山本さんを誘っちゃうんだから！！」
「だから好きにすれば良いよ。僕には関係ない」
ああ、恭さん！なんてことを・・・！
草壁がさーっと青ざめたのと同時に
「ヒ、ヒバリさんの馬鹿ー！！！もう勝手にしますっ！！！」
潤んで溢れ出てきた大粒の涙を荒っぽくぬぐって、ハルは駆けて応接室を出て行く。
バァン！と大きな音を立ててドアはしまった。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
しーんっと静まりかえった空間、草壁が何とか言葉を続けようと、そっと雲雀の様子を伺いみたところ・・・・・・
草壁は更に胃の痛みが激しくなるのを感じた。
話し、続けられるのだろうか、それより身の安全すら危うそうだ。
ヒバリさんのバカバカバカ。冷血漢、ひとでなし、非人間！
バカバカバカ。最低です。最低最悪の人種です！
ハルは、ぐるぐる巻きにしたマフラーの先が前方にずり落ちてくるのを、荒々しく後ろへと追いやる。
堪えようとしても、情けないほどにポロポロと落ちてくる涙をぐいっと手の甲で振り払いながら、早く商店街を抜けてしまいたい、早く、早くと足を動かす。
やっと・・・。
やっと、構ってもらえるようになった。
何度も応接室に通って、何度も話しかけて、冷たくされても、煩わしさ、疎ましさを全力で出されて放り出されても、やっぱり好きで、大好きで、諦めきれなくて、何度玉砕しても、やっぱり諦めきれなくて。
大好きな気持ちは変わらなくて。
まるでフェニックスのように何度も復活して「好きです、お付き合いしてください」と言い続けるハルに雲雀はずっと黙ったまま・・・・・・何時間も黙ったまま・・・・・・それでも「好きです、お付き合いしてください」と言い続けたハルに、最後に雲雀は「・・・・・・・・・君には、負けたよ」と言ってくれたのだ。
その後も相変わらず、の彼だけど、それでも時々に見せてくれる優しさや微笑みは、自分に心開いてくれている証しと思って、とっても嬉しかった。
・・・でも、確かなものもほしい。
巷のカップルみたいに、イベントがあるたびに約束を交わして、一緒に甘い時間を楽しむ恋人同士みたいなこともしてみたい。
一緒に歩いて。
手をつないでもらって。
ねぇ、見てください。この男性がハルの恋人なんです。とっても格好良いでしょう！ステキでしょう！
みんなに見せびらかしたい！
ハルの恋人。
大好きなハルの風紀委員長を。
ヒバリさんのバカ、乙女心をちっとも分かってない。
今日も並盛商店街の色とりどりのクリスマスイルミネーションは、美しく光輝いている。
ハルは電飾を引っこ抜きたくなった。
「もう、いいですー！！！」
何も、見たくありません！
ハルは駆け出した。
その日からハルは応接室に行くこともなく。
雲雀からの連絡もなく。
指折り数えて待っていた１２月２５日、当日を迎えて。
ケーキの予約も取り消した。
２４日の午後から冬休みに入ったハルは、結局、学校から帰ったあとも一歩も家から出ることもなく、２４日の２４時間はあっという間に過ぎていって、幸いなことに家族と過ごしたクリスマスイブがちょっとハルの心を和ませてくれて、それだけが救いだった。
事の顛末を聞いた友達が「ハル、一緒に行かない？」って誘ってくれたけど、結局、断った。
クリスマスに並盛町で風紀活動をしている雲雀に会いたくなかった。
獄寺や山本には、もちろん声をかけなかった。
ハルだって売り言葉に買い言葉で言っただけであって、実際に彼らとクリスマスを過ごすことを考えていたわけじゃないし、だいいち、失礼だ。
ツナさんと京子ちゃんは・・・・・・いまごろ、楽しんでいるのだろうなぁ・・・。
ハルはため息をついた。
雲雀のために買ったクリスマスプレゼントは捨てようとして・・・一度はゴミ箱にいれたものを取り出して、机の上に置いてある。
緑と赤をアクセントにした紙袋に入れられた、クリスマス用に可愛くラッピングされたプレゼントをのぞきこんで、そっと触ってみる。
ふと目に入ったカレンダーには、２５日に大きく花丸がしてあった。
ヒバリさんの、バカバカバカバカバカ・・・。
ハルはベッドにごろり、と転がって、枕に顔をおしつけた。じわりと涙が浮かんでくる。
「雲雀さんのばかぁっ！」
涙があとから、あとから零れ落ちていった。
「・・・・・・・・・・・・？」
ぶるっと体をふるわせて、あまりの寒さに眠りから目覚めたハルは、まだ感覚がはっきりせず、暗い部屋のなかをぼーっと見つめる。
いつの間にか寝ていたみたい・・・・・・。
そうして、ゆっくりと視線を移して、はっと目を見開くと、急いでベットから駆け下りて、窓のそばによる。
結露がじんわりと窓ににじんで、いつの間にか、真っ暗になった空から、何かが落ちてきていた。
「ゆき、・・・・・・」
ホワイトクリスマス。
窓をあけると、ひんやりとした新しい空気がハルの頬をさすっていって、すーっと全身にしみこんでいく。
ハルの家の前の丸い電球がはめられた、ちょっとお洒落な街灯がまっすぐにアスファルトを目指して光の道をつくりだす。
光の道にレリーフされた雪は、濡れてキラキラと光っているアスファルトにひらひら舞っては、消えていく。
ハルがすぅっと右手を前にのばすと、その手のひらに雪がふわりと舞い落ちてきた。
ふわり、ふわり。
少し結晶のカタチを残した雪は何度も何度もハルの手のうえに落ちて少しの間だけとどまると、そうして、ゆっくり溶けていって、小さくその姿を消していった。
その清浄さだけを残して。
「ヒバリさん・・・」
ハルはつぶやく。
「会いたい・・・です」
何日、会っていない？
何日、彼の声を聞いていない？
何日、彼に触れていない？
バカだ、と思った。
なんて、バカだったんだろう。
ハルに触れる、あの長く細い指が大好きで。
ハルをうつす、あのオニキスのように黒く綺麗な瞳が大好きで。
クールなのにホットで、ビターなのにスイートで、ドライなのにセンシティブで、デンジャラスだけどテンダネスで。
かみ合わないようでいて、かみ合う会話。
微笑む顔。怒った顔。拗ねた顔。照れた顔。
なにもかも大好きで、大好きで、ときに心が弾けてしまいそうなほど、大好きで。
前髪と前髪が触れた、あの瞬間。
嬉しくて、幸せで、涙がとまらなかったの。
どうして、忘れてはいけないことはポロポロと落ちていくのに、
目に見えるものだけに、いつも捕らわれてしまうのだろう。
会いたい。
すごく、会いたい。
ヒバリさん、ハルは、ヒバリさんに、会いたいです。
気がつけば、走って走って走って・・・。
ハルの足は、並盛商店街に向かって走っていて。
ちょっと降り積もった雪に足をとらわれながら。
明日は、この調子でいったら、もっと、もっと積もるかもしれない。
今・・・何時でしょう？
息をきらしながら、商店街をキョロキョロしながら走る。
風景が風のように過ぎ去っていくけれど、雲雀らしき人間も、風紀委員らしい人間も見当たらない。
・・・時間もだいぶん遅いのでしょうか？
クリスマスイルミネーションは輝いていたものの、店はあらかた閉まりかけていて、すれ違う人々もまばらになっていた。
並盛町最大のクリスマスツリーの前に到着したとき、ハルはようやく足を止めた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」
ハルの荒い息が冷たい空気に溶けていく。
ハルの顔から汗がつぅっと流れおちていく。
呼吸を整えている間も、キョロキョロと首を動かしながら、ぐるりとクリスマスツリーの周りを歩いていく、ハルの黒髪に、
細い肩のうえに、雪がハラハラと落ちてきて、彼女の姿を白色に変えていこうとする。
ここにも・・・いません。
ヒバリさん、もう帰っちゃったのでしょうか・・・。
はぁ、っと大きく白い息を一つ吐いて、ふっと見上げた、今回の目玉の大きなクリスマスツリーは、アクアマリン色の電飾がキラキラと輝いて、紺色の丸いグラスボールがふわりと揺れて、赤いリボンがついたいっぱいのシルバーの小さな鈴が今にもリリンと鳴り出しそうで、てっぺんに金色の星が瞬いていた。
今年最後の燈を灯すツリーは、冬の澄んだ空気のなか、厳かに輝いて、綺麗で、本当に綺麗で。
「綺麗です、ほんとうに」
その温かい灯はハルの心のなかに沁み込んできて、泣き出しそうになる。
「きれい・・・」
ハルがもう一度そう呟いたとき、パッと、目の前で今まで燃えるように灯っていたアクアマリンは、最後の輝きを名残惜しそうに光らせたあと、消えていった。
シーンと静寂と暗闇がクリスマスツリーの周りにもハルの周りにも一気に訪れる。
「・・・・・・・・・・・・終わっちゃいました」
ポツリとつぶやいたとき、ふと自分の頬が濡れていることに気づいた。
「はひ？」
なんでだろう。
会いたかった。
誰に。
誰に？
ヒバリさんに。
会いたかったですよ。
すごく会いたかったです！
「・・・うぅ、うわぁぁぁ・・・！！」
両手を口に当てて、うずくまって、声を押し殺す。
「ヒバリさんの馬鹿！どこに行っちゃったんですか！どうして居ないんですか！約束なんてしていなくても、ここに現れて下さいよ！今すぐパッと現れて下さいよっ！」
絞り出した声に、すぐに自分の否定の声が重なる。
無茶言ってる。
馬鹿言ってる。
自分勝手だ。
わがままだ。
現れるわけない。
もう帰っちゃったんだ。
でも。
でも。
でも。
バカバカバカ。
会いたい、会いたかったんです・・・・・・
「無茶言わないでよ。僕はエスパーでも魔法使いでも、何でもないんだから・・・」
「・・・・・・・・・・・」
頭上から、聞き覚えのある低い声が聞こえて、ハルは覆っていた手を離して、ゆっくりと視線を上にあげて、
そこに居たひとは。
「・・・っ！ヒバリさんっ・・・」
目の前に・・・・・・ヒバリさんが・・・。
「うわああああああああんっ！！！」
突撃するようにハルは雲雀に抱きつくと、ぎゅうっと雲雀の背中に両手をまわして、彼の胸に顔をうずめて叫ぶ。
「どこに行っていたんですか！ハル、会いたかったんです！とっても、とっても、とっても、会いたかったんです！」
「うん・・・ごめんね。ハル」
雲雀はハルの黒髪をゆっくりと何度も何度も撫でる。
「・・・君の家に行ったら、僕に会いに行く、って言って飛び出したって言うし・・・君は携帯を持っていってないし・・・」
「はひ・・・ヒバリさん、ハルの家に来てくださったのですか？」
雲雀の言葉に顔をあげて見上げたハルは、雲雀の姿を見て気づく。
彼のサラサラ流れる漆黒の髪が、普段より乱れて、ぐしゃぐしゃなこと。
前髪に見え隠れする額にうっすらと汗がにじんでいたこと。
体が、とても冷たくなっていて・・・。
「・・・ハルを・・・探していて、くれていたのですか？」
雲雀は横を向く。ちょっと怒っている風にも見えて、
「ヒバリさん？」
ハルは少し不安げに名前を呼んだ。
「・・・僕だって、会いたかった」
耳もとでポツリと言葉が落ちていくように告げられたあと、そのまま強く抱きしめられて、雲雀の胸にとじこめられたハルは、目を白黒させて、でも、嬉しくて、幸せで、また、じわりと瞳の奥から涙があふれでてきて、零れ落ちていくのを感じた。
「ヒバリさん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」
本当は、何度も言いたかった言葉。
わがまま言って、ごめんなさい。
素直になれなくて、ごめんなさい。
・・・ハルを見つけてくださって、ありがとうございます・・・
「ハル、これを」
ひとしきり、雲雀はハルを抱きしめて、彼女の心が落ち着いてきたころ、彼はアスファルトにおいていた紙袋を渡す。
「はひ？」
ハルが中を覗き込むと、銀色のラッピングペーパーに赤と緑のリボンがキュッと結ばれたバスケットのなかに、真っ赤なポインセチアが綺麗にその葉を伸ばしていた。
「ヒバリさん、あの、これ、これ・・・あの、もしかしてハルに・・・？」
ハルは頬を紅潮させて、赤と緑のコントラストが見事なポインセチアを見つめる。
「綺麗でしょ」
「・・・・・・君に、ぴったりだ」
そのときハルが見た雲雀は、たまにしか見ることができない稀少で寡少で貴重なハル特権の微笑みだった。
「ありがとうございます・・・・・・」
感激に言葉が続かなくて、ハルはギュッと紙袋を胸の前で抱きしめる。
「ねぇ、ハル・・・」
そんなハルに雲雀は目を細めて、にやりと悪戯っぽく口元をあげた。
「・・・あとは、点灯式を見て、色とりどりのクリスマスイルミネーションを見ながら・・・・・・キス、するんだっけ？」
「はひっ！？！」
思わず、抱きしめていた紙袋を落としそうになって、雲雀が電光の早さでアスファルトに直撃する前にキャッチした。
「気をつけて」
「あっ、すみません」
ハルはグルグルと頭の中にハテナマークをめぐらせて、ゆっくりとした動作で紙袋を受け取ると、雲雀を見つめる。
「は、ひ、は・・・・・・ど、ど、ど、ど、どうして、そ、そ、それ、それ、それをっ・・・・・・」
真っ赤になって、大きな吊りあがった瞳をクルリとさらに大きくさせて、やっと出た言葉は口が上手くまわらなくて、グダグダになったあとは、ただパクパクして雲雀を凝視するハルに、雲雀はくくくっと笑いながら、
「だって・・・君、ときどき、心に思っていることが、口にでていることが、あるよ」
「はひー！！！！！！」
思いっきりハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。
頭が、地面が、くるくる回る。
「そ、そうだったんですか・・・・・・・・・」
な、なんてこと・・・・・・。
そ、そんな羞恥プレイを行っていたなんて・・・・・・。
ハル・・・・・・もうダメです、生きていけません。
「うう・・・でも、でも、もう、点灯式は終わっちゃったし、イルミネーションも消えてしまってるじゃないですかっ」
分かっているくせに「君、知らなかったの？」と意地悪く聞いて、まだくくくっ(思い出し笑いをしているのだろう)と、いつまでも笑い続けている雲雀にハルは、なんかもう情けないやら、恥ずかしいやら、逃げ出したいやら、さまざまな感情が逆巻くなか、涙目で精一杯の反論を試みる。
「ねぇ君、僕を誰だと思ってるの？」
ひとしきり笑ったあと、雲雀はハルを見て、ニヤリとすると視線を移動させた。
雲雀の視線に促されて、一緒に見上げたハルの目の前に広がったものは・・・。
丸い紺色のグラスボールがふわりと揺れて。
赤いリボンがついたいっぱいのシルバーの小さな鈴がリリンと鳴り出しそうで。
てっぺんに金色の星が輝いて。
アクアマリンに燈されたクリスマスのカタチたち。
揺らめきながら地上に落ちてくる雪もアクアマリン色に燈っていく。
「キレイですね」
魅入られるように見ていたハルが雲雀に微笑んで、彼と彼女の瞳がふっと合った瞬間。
彼が漆黒の瞳をとじて、彼女もそっと瞳をとじて。
「メリー・・・クリスマス」
前髪と前髪が触れる距離、ふわりとハルの唇に、彼の冷たいけれど、やさしい口付けがおりてきた。
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タイトルの『アクアマリンキャロル』の「アクアマリン」は天然石からです。
アクアマリンの石の効果は「人と人を調和させるパワーも持つ」っていう効果があって、仲違いしている夫婦や恋人に、
仲直りのきっかけを与えてくれるそうです(＾＾)
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