この「感情」が何というかなんて、知らないし、知るつもりもない。
知る必要もないし、これからだって、知ろうと思わない。

-----　開き直り　-----

その、フワフワした、小さな小さな、弱弱しい小動物は、いつの間にか、その勢力を拡大させて、
僕の内に侵入してきて、こともあろうに、住みだした。

何度、咬み殺してやろうか、とトンファーを握ったか、わからない。

僕は、そんなにアマクないんだよ。
僕のこと、勘違いしてもらっては、困る。

思いっきり、するどい視線をなげてみた。
辛らつな、冷たい言葉をはなってみた。
群れた愚かな子羊どもをひきずって、歩いてみせた。

「ハルは、そんな試練、のりこえてみせますー」

なのに・・・。
ワケのわからないことを言う。
思考回路は、どうなっているんだ。

「ヒバリさん。ヒバリさん。」
「はひー！ヒバリさん。」
「ヒバリさーん。」

君は。
何者。
僕に近寄らないで。触れないで。なかに入ってこないで。

思いっきりの、拒否。
睨み付けて、邪険にして、何度、トンファーをこの手に取ってみたか、分からない。

ムカムカする。
イライラする。
グチャグチャにしてやりたくなる。

乱される、壊される。
この、こみ上げてくる制御のきかない、これは、何？
馬鹿げている、この感情は、何？

僕は、狂っている。

そう思わずには、いられない。

その、フワフワした、小さな小さな、弱弱しい小動物は、さらに、凶暴性をまして、凶悪になって、
僕の内を支配していく。
最後の砦、いつ、突破されるか、分からない。

この「感情」が何というかなんて、知らないし、知るつもりもない。
知る必要もないし、これからだって、知ろうと思わない。

知ったからといって、何になるというの。
どうせ、もう。
抗うことなんて、できないに決まっているのだから。

「三浦・・・。三浦、ハル・・・」
彼が彼女の名前をそっと呼ぶと、彼女は嬉しそうに、駆け寄ってきた。
無防備な彼女。いつまでも、子供のような彼女。
そんなに信頼していいの？

そっと、その前髪に触れて。
そっと、頬をなでて。
いつもと違う彼の態度に、彼女は、真っ赤になった。
ゆっくり、顔を近づける。
「ヒバリ・・・さん？」
「・・・黙って」
制止されて、素直に受けとめるところは、彼女の良いところ。
そっと、彼と彼女の唇が重なる。

嬉しそうな彼女だけど。
これで、満足すると思うの？
彼は彼女をそのまま、ソファに押し倒した。

「ヒ・・・ヒバリ・・・さん？」
彼女はびっくりしたように、瞳をしろくろさせていたけれど、また顔を近づけていくと、
そっと話すのやめて、真っ赤な顔を、さらに真っ赤にさせて、そうして目をとじた。

おりこうさんだね。
でも、申し訳ないけれど。
やさしい、キスなんて、出来ないから。

「・・・・・・ん・・・ふぅ・・・・・・はぁ」
「うぅ、んん・・・・・・ん」
先ほどに比べて、苦しそうだね。
息もつけないほど、奪ってあげる。

「あっ、・・・ぅんんん・・・・・・ん、ん、ん？」
キスをしながら、そっと、指をブラウスのボタンに当てる。
「ヒッ、ヒバ、ヒバ、ヒバ、ヒババババババババ、ヒバリさん！！！」
気づいた彼女は、あせって彼の体を押し返そうと、体をバタバタさせるけれど、
彼はおかまいなしに、行為を続ける。

逃がさない。
いまさら、逃げようとするなんて、反則だよ。

そっと、彼女のやわらかい耳朶を噛んで。
細くて、白い首すじに口付け。

ちゅ。

音をわざとたてて。

「ふぁっ！うー。ヒバリ、さぁん！」
暴れる彼女を、力で押さえつけて、鎖骨からその下へ。
彼女の足を、彼の身体で割って入って。
一番、敏感そうなところを足で押さえつけた。

「ひぁあっあぁ！ぁんん・・・うぅぅ・・・」　ビクリと跳ねる彼女の身体。
思ったより反応が良くて、彼は嬉しくなる。
彼女の溢れでた涙が、ポロポロと流れ落ちるのを見て、熱いものが、彼の身体にこみ上げる。
もっと、鳴いて、もがいて、満足させてみせてよ。

「待って、ちょっと待ってください、ヒバリさん！待って・・・んっ！」
「・・・ん、ふぅ、・・・・・・はぁ」
「駄目だ。逃がさない」
熱い口付けで、熱い声で。
そして、締めつけるような瞳で、制止されれば、動けない。彼女。
「はひ・・・だけど、だけど、だけど、だけど・・・・・・」

その刹那。
彼の表情が、請うような、願うような、祈るような、苦渋のものに変わった、
その、ほんの、ほんの一瞬を。
彼女は、一生、忘れないでしょう。

彼女は、まるで、悪魔の甘い誘惑に吸い込まれるように、
魅惑の歌声に、誘われるままに近づいていく帆のように、
美しい彼女の魂を、無心でささげる生贄のように、

ゆっくりと、彼女を彼にささげた。
その瞬間、彼の最後の砦が、くずれさった。

君が悪いんだよ。
三浦ハル。
僕の中に、入ってくるから。

さぁ。責任、とって。

END